請求した過払い金に税金ってかかるの?
過払い金って課税対象?
過去に払いすぎた利息金を貸金業者から返還してもらえる「過払い金請求」。テレビなどで取り上げられることも多く、簡単な内容を知っている人も多いでしょう。
しかし、実際に周りで過払い金請求を行った人の話というのはなかなか聞くことができず、実態がいまいち分からないという人も多いようです。特に不安視されているのは、やはり「お金」のことのようで、お金を回収した場合にそれが所得とみなされてしまうのではないか、という疑問をよく耳にします。
過払い金請求をしたいけど税金がかかるのか気になる、確定申告をしなくてはいけないのか、といった疑問をお持ちの方に、過払い金の扱いや内訳など、お金に関する内容をまとめてご説明します。
過払い金そのものには税金はかからない!
過払い金請求では、課税対象になるものとならないものがあります。
まず、過払い金請求を知るにあたって、過払い金の請求者に認められた権利を説明しましょう。過払い金は、すべての取引履歴について正しい金利で引き戻し計算をして算出します。そして過払い金が発生した日から「年5%の利息金」を請求することが認められているのです。
つまり、過払い金を請求する場合には、請求するお金を「元金」と「利息」の2つに分けることができます。過払い金請求で納税の必要がないのは元金のみを回収した場合であって、利息については課税対象になってしまいますので注意が必要です。
なぜ元金が非課税なのかというと、発生している過払い金はそもそも貸金業者に払いすぎたお金、つまり「自分のお金」です。そのため、新たに所得が発生したり財産が増えたりしたことにはなりませんので、税金もかかりません。したがって、過払い金元金のみを回収した場合には、確定申告をする必要もありません。
また、和解決着の場合には満額の過払い金を回収できないことも多く、ほとんどの人が8割以下で和解しているようです。このような場合であれば、納税の心配は不要となります。
利息にかかる税金とは
先ほど説明したように、過払い金が発生している場合、過払い金には年5%の利息金を請求することができます。この利息金については「雑所得」という扱いになりますので、そのほかの雑所得と合わせて20万円を超えるのであれば納税しなくてはいけません。
ちなみに、その際の裁判費用は経費にはなりません。経費として計上できるのは、司法書士などの専門の法律事務所へ依頼をした場合の成功報酬のみになります。
つまり、専門家への報酬を差し引いた利息金が20万円以下であれば納税の必要はなく、サラリーマンであれば年間20万円を超えない場合は申告自体も必要がありませんので、確定申告も不要となります。
利息にはいくらの税金がかかる?
利息金が20万円を超えるような場合には、確定申告をして税金を支払わなくてはいけません。通常の収入であれば「所得税」や「地方税」がかかりますが、過払い金の利息金の場合はどのような税金がいくらかかるのでしょうか?
日本は累進課税という方式をとっていますので、給与所得と雑所得を合計した総収入額で税率が決まります。国税庁によると、2015年(平成27年)4月1日現在の所得税の税率は以下のようになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
※参考
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
利息金のみで20万円を超えるようなケースはあまり見られませんが、過払い金が膨大だったり、長期間にわたって取引を行ったりした場合には利息金も多くなりますので、中には利息金によって税金を納める必要もあるでしょう。
個人事業・法人の場合は?
個人事業や法人の場合にも融資を受けたり、返済をしたりすることがあります。借金の元本返済そのものは賃借対照表上の取引となり経費にはなりませんが、利息金については経費として損金算入することができます。
この点を踏まえて、個人事業・法人の場合の過払い金請求に関するお金の扱いを考えてみましょう。
修正申告を忘れずに!
個人事業・法人で借金をして、その返済の利息金を経費として計上していた場合、過去の借金で過払い金が発生していると、過払い金の請求によって返済した利息金も変わってくることになるので、所得税の修正が必要になります。
例えば、貸金業者から100万円の借り入れをして、1年間で元金30万円と利息15万円を支払ったとします。この利息15万円を必要経費として計上することで課税所得を減額するのですが、ここで正しい金利で引き直し計算をした結果10万円の過払い金が発生していたとなると、過払い金請求を行うことで経費も5万円へと修正し、再度所得税の計算をしなくてはならないのです。
つまり、個人事業・法人の過払い金請求の際には、過払い金請求をした年の確定申告だけではなく、過払い金が発生していた年の修正申告が必要となるので、注意が必要です。
弁護士費用・訴訟費用の経費計上は?
これはサラリーマンでも同様のことがいえるのですが、司法書士費用や弁護士費用を経費として計上することで、課税対象となる所得を減額することができます。
過払い金に関する費用のうち、経費として認められるのは何でしょうか?
ここでいう経費とは、雑所得となる「過払い金の利息」を回収するのにかかる費用のみが認められます。
税務署の見解によると、過払い金の返還訴訟は過払い金の利息ではなく元本を取り返すために行うものであるから、経費としては認められないようです。
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